軽油市場においては、ここ近年、原油価格の上昇に伴ってコスト上昇分の適正な転嫁が課題になっているにもかかわらず、思うように進んでいない。
この原因のひとつとして、「脱税軽油」の存在が、軽油市場における公正競争の阻害要因のひとつであると考えられている。
こうして脱税軽油は、通常の販売価格では到底あり得ない不当な廉価で取引されていることから、周辺市況に悪影響を及ぼしており、一刻も早く軽油市場から脱税軽油を排除する必要がある。
不正軽油の使用は大気汚染の原因となる他、製造過程で発生する硫酸ピッチが不当に投棄され水質汚染の原因となります。
不正軽油の原料となるA重油と灯油には識別剤(クマリン)が添加されているが、不正軽油の製造過程において識別剤を除去するために濃硫酸を混入することにより「硫酸ピッチ」が生成される。
大気中に放出されると拡散されるため、大きな悪影響を及ぼす危険性は少ないと考えられるが、放置されたドラム缶のふたを急に開けたりして、溜まった高濃度のSO2などを吸うと呼吸困難など重い呼吸障害を発生させる危険性がある。
硫酸ピッチは、粘性が高く、一気に土壌などに広がることはないが、強酸性なため管理が悪いとドラム缶を腐食させ、土壌などに浸透していき、土壌汚染や地下水汚染を引き起こす。また、土壌に元々含まれている金属類を溶かすことにより、さらなる地下水汚染を発生させることが懸念される。
硫酸が含まれているため、そのまま焼却処理すると、大気汚染や焼却設備破損のおそれがある。中和処理が必要であるが、硫酸ピッチは放置されると固化してしまう性質があるため、その処理は難しい。
※不正軽油製造業者への立ち入り調査結果による
硫酸ピッチの主成分は、硫酸イオン(36%:未反応の硫酸を含む)、タール(34%)、油分(7.7%)であり、放置しておくと油分の揮発等により粘性が増して、固化する。
未反応の硫酸が含まれているため、非常な強酸性で、排水基準に適合させるためには、約50万倍の水で希釈する必要がある。
硫酸ピッチを入れたビンの上部には、硫酸が分解して生じたSO2が溜まっており、その濃度は3,600ppm以上である。(400~500ppm:短時間で生命に危険性あり)
タール分が多いため吸入毒性や水生生物への毒性を持つトリメチルベンゼンやトルエン、ジエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類を含んでいる。