軽油引取税の脱税行為(脱税の現状について)

脱税類型の変遷

平成8年から10年にかけて続発した輸入粗油脱税事件を契機として、平成11年度税制改正により、輸入報告義務制度や、関税等書類の閲覧制度の整備等の対策が講じられたことから粗油の輸入は激減した。
また、特約業者及び元売り業者以外の者が軽油を輸入する場合の課税方式について、譲渡後課税方式から「輸入時課税方式」に改められたことにより、平成13年6月1日の地方税制適用スタート以降、脱税目的で輸入された軽油が相次いで差し押さえられるなど所期の成果が挙がっている。
こうした制度改正の効果がある反面、近年、軽油脱税の古典的手法である末端流通段階における混和脱税事案が増えているなど、依然として軽油引取税の脱税が後を絶たない。最近の混和脱税は、実体のないダミー会社間を転々とさせて脱税の補足を困難にさせたり、暴力団関係者が関与した事案が増えているなど、その手口が巧妙化、悪質化、広域化している特徴がある。

最近の主な脱税事案

  1. 愛媛県内の廃油処理業者と石油販売業者が、不正軽油9,981KLを製造し、軽油引取税約3億2,000万円を脱税(平成14年5月)
  2. 栃木県内の石油販売業者と廃油再生業者が、不正軽油約3万KLを製造、1府5県の運送業者に販売。軽油引取税約9億5,000万円を脱税(平成14年6月)
  3. 埼玉県の石油販売業者が、不正軽油約1万KLを製造。1都7県の運送業者に販売し、軽油引取税約3億円を脱税。また、同社は「硫酸ピッチ」の不法投棄により廃棄物処法違反でも摘発(平成14年11月)
  4. 徳島県内の石油業者3社が、不正軽油2,600KLを製造。数県の運送業者に販売し、軽油引取税約8,500万円を脱税。(平成14年11月)
  5. 千葉県内で軽油を密造していた暴力団関係者(主犯格)を逮捕。無許可で軽油や重油など指定数量を超えてタンクに貯蔵していた消防法違反で摘発されたのがきっかけで軽油密造が発覚(平成15年6月)
  6. 千葉県内の石油精製業者など3名が、茨城県岩井市にある精製工場で、県知事の承認を受けないで、不正軽油を製造し、軽油引取税約1億9,356万円を脱税。混和等承認義務違反を初めて適用。また、同人等は硫酸ピッチの不正処理により産業廃棄物法違反でも摘発。(平成15年6月)
  7. 千葉県の石油精製会社が、不正軽油を製造・販売し、軽油引取税約1億5,000万円を脱税。また、同社は硫酸ピッチの不法処理により産業廃棄物法違反でも摘発されている。(平成15年7月)

最近の主な脱税事件とその特徴

最近の脱税事案は、軽油にA重油や灯油等を混合したり、A重油と灯油を混和して不正軽油を製造する事例がほとんどであり、その際にはA重油と灯油に添加されている識別剤(クマリン)を除去して、本来の軽油との差を見分けるのを難しくしている。

最近の軽油脱税事件案の特徴

  1. 【広域化】
    数県にまたがる事案が増えており、1県だけではもはや調査・摘発に限界がある。
  2. 【悪質化】
    暴力団関係者が絡むケースがほとんどであり、また、脱税額も巨大化しているなど悪質化している。
  3. 【巧妙化】
    複数のダミー会社を介在させたり、会社の偽装設立や偽装倒産を転々と繰り返すなど巧妙化している。
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